ゲーム開発大手トーセの業績急落の裏側 複数案件の中止と開発遅延が直撃

オタク総研ゲーム開発受託大手のトーセが、2024年8月期第3四半期決算で大幅な業績悪化を報告した。国内最大級の独立系受託開発専門企業として知られるトーセだが、複数の開発案件の中止や遅延が直撃し、営業赤字に転落するなど深刻な状況に陥っている。

トーセの異例の業績不振の背景

  • ゲームソフト関連で顧客の方針転換などにより複数の開発案件が中止
  • 一部案件では期初から制作を進めていたものの、中止により見込んでいた売上が立たず損失計上
  • モバイルコンテンツ関連でスマートフォンゲーム案件の大規模サーバー増強が必要となり開発遅延
  • 当初想定より開発スケジュールが遅れ、開発売上が減少

トーセは国内最大級の独立系受託開発専門企業として、任天堂、ソニー、カプコンなど多数の有力ゲーム企業と取引し、累計2,300本近い開発実績を持つ。

自己資本比率は85%超え、44期連続の黒字決算という健全経営を続けてきただけに、今回の業績不振は異例の事態となった。

顧客企業の方針転換が直撃

トーセの業績悪化の最大の要因は、ゲームソフト関連で顧客企業の方針転換などにより複数の開発案件が中止となったことにある。

一部案件では期初から制作を進めていたものの、中止により見込んでいた売上が立たず、損失として計上することとなった。開発コストは既に投じられており、案件中止によって無駄な出費となってしまったのだ。

モバイルコンテンツ開発の遅延も影響

さらに、モバイルコンテンツ関連でも、開発中のスマートフォンゲーム案件で大規模なサーバー増強が必要となり、それに伴う作業の手戻りが発生した。

当初想定より開発スケジュールが大幅に遅れたことで、開発売上が減少。モバイルコンテンツ事業は結果として6億6,200万円の営業損失となり、前年同期の3億9,700万円の黒字から一転した。

プロジェクト管理の強化と開発力の底上げ

トーセはこの業績悪化を受け、不採算案件や失注時の損失発生を防ぐため、プロジェクト管理ルールの強化と徹底に取り組むとしている。

加えて、先進技術の研究開発や開発スタッフの育成にも注力。海外顧客との商談機会の増加を図り、業績回復を目指す方針だ。

ゲーム業界の成長市場への対応が課題

一方で、トーセは、ゲーム等のグローバル市場は今後も成長が見込まれるとの認識を示している。

業績不振の要因となった開発案件の中止や遅延は、顧客企業の方針転換によるものであり、ゲーム市場そのものの成長性には変わりはない。トーセにとっては、このような成長市場に対して、開発力の底上げと適切な受注管理を行うことが急務となっている。

まとめ

トーセの業績不振は、複数の開発案件の中止と遅延が直撃したことが最大の要因だった。健全経営を続けてきただけに、今回の事態は大きな衝撃となった。今後は、プロジェクト管理の強化と開発力の底上げを図り、成長が見込まれるゲーム市場に適切に対応していくことが課題となる。

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